マネーの魔術史 (53)

特殊金融機関「外資金庫」の秘密

執筆者:野口悠紀雄 2018年6月1日
タグ: 中国 日本
エリア: アジア
(C)AFP=時事

 

 軍票の乱発により、占領地域で激しいインフレが発生した。

 1936年(昭和11年)の年平均を基準にした卸売物価指数を見ると、北京では1943年3月に10倍以上になり、1944年末には50倍に近づいた。上海では、1941年秋に10倍を越え、1943年末には100倍を越えた。そして、1944年末には1000倍に近づいた。シンガポールでは1944年末に1941年末の100倍を越した。

 これに対処する方法として本来取られるべきは、公定為替レートの切下げである。しかし、日本政府は、そうしなかった。なぜか? 『昭和財政史』第4巻(p369)の説明は、つぎのとおりだ。

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執筆者プロフィール
野口悠紀雄(のぐちゆきお) 1940年東京生まれ。東京大学工学部卒業後、大蔵省入省。1972年エール大学Ph.D.(経済学博士号)取得。一橋大学教授、東京大学教授などを経て、現在、早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論。1992年に『バブルの経済学』(日本経済新聞社)で吉野作造賞。ミリオンセラーとなった『「超」整理法』(中公新書)ほか『戦後日本経済史』(新潮社)、『数字は武器になる』(同)、『ブロックチェーン革命』(日本経済新聞社)、『マネーの魔術史』(新潮選書)、『AI時代の「超」発想法』(PHPビジネス新書)など著書多数。公式ホームページ『野口悠紀雄Online』【http://www.noguchi.co.jp
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