2枚目の紙

トム・ハンクス『変わったタイプ』

執筆者:堀江敏幸 2018年9月22日
エリア: 北米 日本
初の小説集を上梓した俳優のトム・ハンクス
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 誰知らぬ者なきハリウッドのスター俳優が、61歳で世に問うた初めての小説集だという。さまざまな状況下で、さまざまな役柄を演じてきた経験豊富な才人だから、題材には事欠かないだろうし、ストーリーの組み立ても登場人物の会話も、さぞかし堂に入っているにちがいない。著名人がものした「文章」を前にすると、人はたいていそんな意地の悪い見方をするものだ。実際、ここには語るという行為における大きな自信に裏打ちされた、ぶれのないまなざしが感じられる。しかし同時に、そこから飾りものの虚を取り払った純粋な眼だけを残す慎ましさも稼働していて、これはまちがいなく言葉を扱う作家の属性だと言っていいだろう。

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執筆者プロフィール
堀江敏幸 1964(昭和39)年、岐阜県生れ。1999(平成11)年『おぱらばん』で三島由紀夫賞、2001年『熊の敷石』で芥川賞、2003年『スタンス・ドット』で川端康成文学賞、2004年同作収録の『雪沼とその周辺』で谷崎潤一郎賞、木山捷平文学賞、2006年『河岸忘日抄』、2010年『正弦曲線』で読売文学賞、2012年『なずな』で伊藤整文学賞、2016年『その姿の消し方』で野間文芸賞、ほか受賞多数。おもな著書に、『郊外へ』『いつか王子駅で』『めぐらし屋』『バン・マリーへの手紙』『アイロンと朝の詩人 回送電車III』『未見坂』『彼女のいる背表紙』『書かれる手』『燃焼のための習作』『音の糸』『曇天記』ほか。
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