その男は、弟子が作った模型を不機嫌そうに眺める。そして次の瞬間、右の拳でその模型を叩き潰した。「作り直せ、今晩徹夜でやれ!」 模型は細部に正確さを欠いていた。「どう見ても手抜きだろう! おれは手抜きが嫌いなんだ!」 安藤忠雄氏の仕事ぶりを追った、一九八六年放送の「ドキュメンタリー『家』」の一場面。十一月には関西テレビの五十周年記念番組として再放送された。 東京六本木で開かれた建築展でのトークイベントの後、この番組について聞くと、安藤氏はつまらなさそうにこう答えた。「あのくらい普通ですよ。本当はあのあとどついてるんですが、番組ではカットでしたね」
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