「ベトナム独立戦」を支えた旧日本軍「秘密戦士」の生涯(中)「越南独立の為に戦うこととす」

執筆者:吉村剛史 2020年8月15日
タグ: 日本
エリア: アジア
剣道着姿の谷本喜久男氏(前列中央)(次女の牧田喜子さん提供)

 

 敗戦によって、谷本喜久男少尉(1922~2001)の仏印での所属兵団は、ベトナム北部を所管した中国国民政府軍による武装解除を受けた。手記によると谷本氏は、将校の仕事として戦後処理に追われ、内地帰還を待ちわびつつも、一方でベトミン(ベトナム独立同盟)幹部と交流を深めたという。

 大戦中には自身がベトナム人工作員を指揮する立場だったため、その延長上に生じた交流だったと推測される。

「新越南人に生まれ替り……」

自らを「小林少尉」と記した谷本氏

 戦後50年に当たる1995(平成7)年に谷本氏がまとめた『回顧録 ベトナム残留記』は、いかにも中野学校出身者らしく、戦後の現地での活動の一端を秘すため、関係者の名は全て仮名にしてあり、自身のことも「小林少尉」として記録している。

カテゴリ: 社会 カルチャー
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執筆者プロフィール
吉村剛史(よしむらたけし) 日本大学法学部卒後、1990年、産経新聞社に入社。阪神支局を初任地に、大阪、東京両本社社会部で事件、行政、皇室などを担当。夕刊フジ関西総局担当時の2006年~2007年、台湾大学に社費留学。2011年、東京本社外信部を経て同年6月から、2014年5月まで台北支局長。帰任後、日本大学大学院総合社会情報研究科博士課程前期を修了。修士(国際情報)。岡山支局長、広島総局長、編集委員などを経て2019年末に退職。以後フリーに。 主に在日外国人社会や中国、台湾問題などをテーマに取材。著書に『アジア血風録 』(MdN新書、2021年)。共著に『命の重さ取材して―神戸・児童連続殺傷事件』(産経新聞ニュースサービス、1997)『教育再興』(産経新聞出版、1999)、『ブランドはなぜ墜ちたか―雪印、そごう、三菱自動車事件の深層』(角川文庫、2002)、学術論文に『新聞報道から読み解く馬英九政権の対日、両岸政策-日台民間漁協取り決めを中心に』(2016)など。 日本記者クラブ人会員。YouTube番組『吉村剛史のアジア新聞録』『話し台湾・行き台湾』(Hyper J Channel)等でMCを担当。
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