「黒いビーナス」ジョセフィン・ベーカー、パンテオンに 再選目指すマクロン大統領の意図は

執筆者:軍司泰史 2021年9月7日
エリア: ヨーロッパ
ジョセフィン・べーカーのパンテオン入りはフランス世論からも支持を得た(マクロン大統領) ⓒAFP=時事
1920~30年代のパリを熱狂させたダンサーのジョセフィン・ベーカーが、11月30日に歴史的偉人を祭るパンテオンに改葬される。人種隔離政策下の米ミズーリ州からフランスに渡り、後に対独レジスタンスや米公民権運動に参加したベーカーのシンボル化は、マクロン大統領にとっての政治的アピールという側面もあるだろう。来年4~5月の大統領選に向けて、各党派の候補者選びはこの秋に本格化する。

 パリ中心部5区の丘に建つパンテオンは、フランスの歴史的偉人を祭る霊廟だ。歴代フランス王の墓所があるパリ北郊のサンドニ大聖堂とは異なり、パンテオンはもっぱら「共和国」の偉人を顕彰する目的を持っている。埋葬されているのは、啓蒙思想家ジャンジャック・ルソーやヴォルテール、科学者のキュリー夫妻、作家のエミール・ゾラ、哲学者アンリ・ベルクソンなど約80人。共和国最高の栄誉に値する、そうそうたる面々だ。そこに今年11月、異色な名前が加わることが、このほど決まった。

カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
軍司泰史(ぐんじやすし) 1961年生まれ。1984年共同通信入社。1993~94年テヘラン、1995~99年、2008~12年パリ支局などを経て、共同通信編集・論説委員。2019年4月から青山学院大学非常勤講師。著書に『シラクのフランス』(岩波新書)、『スノーデンが語る「共謀罪」後の日本 大量監視社会に抗するために』(岩波ブックレット)、編著に『伝える訴える 「表現の自由」は今』(拓殖書房新社)、共訳書にイアン・ブルマ『廃墟の零年 1945』(白水社)がある。
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