怒れるフランスの「低所得で高学歴の若者たち」 左派復活は「第6共和制」への序曲か

執筆者:軍司泰史 2022年6月29日
エリア: ヨーロッパ
メランション氏(写真)の打ち出す富裕税復活や資産課税にはトマ・ピケティ氏も支持を表明した (C)AFP=時事
フランス総選挙で与党「共和国前進」(LREM)が過半数を大きく割り込む一方、左派連合「人民環境社会新連合」(NUPES)の支持拡大が大きなテーマに浮上した。極右とはまた別に、「左派のポピュリズム」とも言うべき主張に共感を示す層の声が高まる先には、政治の重心が大統領府から議会へと再び戻る「第6共和制」への体制転換もあるかもしれない。

 フランス政治にはかつて、コアビタシオン(Cohabitation)と呼ばれる一風変わった態様が存在した。「男女の同棲」を意味する、この言葉は大統領と首相が別の党派に所属して、一政権としての体面を保ちつつ、牽制し合う状況を示していた。1958年に始まる第5共和制で過去3回、コアビタシオンに陥った理由は非常にシンプルだ。大統領の任期が7年、首相を事実上決める国民議会(下院)議員の任期が5年とずれていたため、国民の支持動向によっては大統領の政策に反対する野党が下院選を制し、大統領が宿敵を首相に任命せざるを得ない状況に追い込まれたのだ。

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カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
軍司泰史(ぐんじやすし) 1961年生まれ。1984年共同通信入社。1993~94年テヘラン、1995~99年、2008~12年パリ支局などを経て、共同通信編集・論説委員。2019年4月から青山学院大学非常勤講師。著書に『シラクのフランス』(岩波新書)、『スノーデンが語る「共謀罪」後の日本 大量監視社会に抗するために』(岩波ブックレット)、編著に『伝える訴える 「表現の自由」は今』(拓殖書房新社)、共訳書にイアン・ブルマ『廃墟の零年 1945』(白水社)がある。
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