NATO戦略概念を読む(下)――即応態勢の強化と、その先にある中国の「挑戦」

執筆者:鶴岡路人 2022年7月21日
エリア: ヨーロッパ
ルーマニアに展開するNATO即応部隊に派遣されるベルギー軍兵士[ベルギー、ブリュッセル=2022年3月8日](C)EPA=時事
従来は最大4万名だったNATO即応部隊(NRF)は抜本的な改編を行い、NATOの即応能力は30万名に増強される方向だ。そうした即応態勢強化を支える米軍も、さらにコミットメントを深めている。一方で中国については、中長期的にはロシア以上に大きな課題という欧州安全保障専門家のコンセンサスに沿った文言になった。この認識をいかに広げていくことができるかが、今後の課題になるだろう。(こちらの前編から続きます)

 2022年6月末のマドリードNATO首脳会合で採択された新たな戦略概念の焦点は対露抑止・防衛態勢の強化である。「前方防衛」への転換とその背景を検討した(上)を受け、本稿(下)では、それを大枠で支えるNATO全体の即応態勢の強化・拡大、米軍によるさらなるコミットメント、そして、ロシアのさらに先に存在する挑戦として中国について検討したうえで、最後に、NATOがどこに向かっているのかを考えたい。

カテゴリ: 政治 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
鶴岡路人(つるおかみちと) 慶應義塾大学総合政策学部准教授、戦略構想センター・副センタ―長 1975年東京生まれ。専門は現代欧州政治、国際安全保障など。慶應義塾大学法学部卒業後、同大学院法学研究科、米ジョージタウン大学を経て、英ロンドン大学キングス・カレッジで博士号取得(PhD in War Studies)。在ベルギー日本大使館専門調査員(NATO担当)、米ジャーマン・マーシャル基金(GMF)研究員、防衛省防衛研究所主任研究官、防衛省防衛政策局国際政策課部員、英王立防衛・安全保障研究所(RUSI)訪問研究員などを歴任。著書に『EU離脱――イギリスとヨーロッパの地殻変動』(ちくま新書、2020年)、『欧州戦争としてのウクライナ侵攻』(新潮選書、2023年)など。
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