昨年春に起こったチベットの反中民族運動は、北京五輪聖火リレーの混乱とあわせて世界の耳目を驚かせたものの、その後の経緯をみる限り、止むにやまれぬ行動に打って出たチベットの人々の苦悩が緩和されたとは言えない。このような中、一九八九年にチベット独立運動と中国民主化運動(天安門事件)の双方が銃声に圧倒されたことに衝撃を受けたフランス人ジャーナリスト、ピエール=アントワーヌ・ドネ氏が著し、一九九一年に邦訳された『チベット 受難と希望~「雪の国」の民族主義~』が、いま改めて文庫になったことは大いに時宜にかなっている。
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