【THE WIDER IMAGE】バングラデシュの「死んだ川」で暮らす

2023年5月14日
カテゴリ: 環境・エネルギー
エリア: アジア
ヌルル・イスラムはブリガンガ川の川岸で代々暮らしてきた[2023年3月18日](C)REUTERS/Mohammad Ponir Hossain
バングラデシュの首都ダッカの南西を流れるブリガンガ川は「死んだ川」と呼ばれる。かつては魚や水生生物に溢れる街のライフラインだったが、今は工場排水や生活排水によって汚染され、異臭を放っている。川で魚を獲って生計を立てていた住民の暮らしも変わった。

[ダッカ発(ロイター)] バングラデシュの首都ダッカの南西を流れるブリガンガ川の川岸で代々暮らしてきたヌルル・イスラム(70)は、20年前は川で魚を獲って生計を立てていた。当時、この川は街の生命線だったが、現在は産業廃棄物や生活ゴミによる汚染が原因で、ほとんど魚が生息しない「死んだ川」だ。そのためイスラムは近くの小さな屋台でストリートフードを売って生活している。

「20年前、この川の水は綺麗で、生命に溢れていた。私たちはよく川で水浴びをしたものだ。魚もたくさんいて、多くの人が川で魚を獲って生計を立てていた。そうした生活が変わってしまった」。

 ブリガンガ川は「オールドガンジス」とも呼ばれる。ひどい汚染のせいでモンスーンの時期以外は水が真っ黒に見え、1年を通して悪臭を放っている。

ボートでブリガンガ川を渡る人々[2023年3月28日、ダッカのサダルガット地区](C)REUTERS/Mohammad Ponir Hossain

 ダッカの人口約2300万人を含む1億7000万人が暮らす南アジアの国には大小約220の川があり、人々の多くが生活や交通の面で川に依存している。バングラデシュは中国に次ぐ世界第2位の衣料品輸出国だが、市民や環境活動家たちは、産業の振興が川の生態系を悪化させる主要因でもあると口を揃える。近隣の工場や製造所から、未処理の汚水や布地染めの副産物、その他の化学廃棄物が毎日流れ込んでいる。川底に蓄積したポリエチレンやプラスチックのゴミは川を浅くし、流れの変化を引き起こしている。……

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