台湾有事に豪州は関与するのか?――求められる「静かな抑止力」

執筆者:佐竹知彦 2023年6月9日
タグ: AUKUS 台湾
エリア: アジア オセアニア
アンソニー・アルバニージー豪首相(左から2人目)率いる労働党政権の選択とは? 5月20日、広島サミットにおけるクアッド首脳会談にて (C)AFP=時事
過去、英国や米国が主導するほぼ全ての戦争に参加してきた豪州だが、台湾有事への派兵については世論が割れている。現在の労働党政権は対中関係の改善を図るものの、同国の安全保障にとって米豪同盟が「生命線」である以上、有事に何もしないことは「考えられない」。実際の軍事的貢献には多様なオプションが考えられるが、現時点で求められるのは日米豪の相互運用性を高めることによる「静かな抑止力」の強化である。

 

 台湾海峡の緊張が高まるにつれ、豪州の中でも対応をめぐり議論が行われている。前保守連合政権時代の国防大臣であったピーター・ダットンは、台湾をめぐるいかなる米中間の紛争においても、豪州が米国を支援しないことは「考えられない(inconceivable)」と述べ、物議を醸した。これに対し、当時労働党の影の外相であったペニー・ウォン現外相は、ダットン国防相の発言は豪州の伝統的な「曖昧路線」からの逸脱であり、いたずらに緊張を高めるものとして厳しく非難した。実際、2022年5月におよそ9年ぶりに政権に返り咲いて以来、労働党政権は対中関係の改善を図るとともに、台湾問題に関する発言をトーン・ダウンさせている。果たして、実際に台湾海峡で有事が勃発した場合、豪州は日本とともに米国の介入を支援するのだろうか?

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カテゴリ: 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
佐竹知彦(さたけともひこ) 青山学院大学国際政治経済学部准教授。慶應義塾大学法学部卒業後、同大学大学院法学研究科修士課程、オーストラリア国立大学太平洋アジア研究所博士課程修了(国際関係論)。2010年防衛研究所入所、2023年より現職。その間、防衛省防衛政策局国際政策課部員(多国間の安全保障担当)、慶應義塾大学法学部非常勤講師、オーストラリア国立大学豪日研究センター客員研究員、法政大学グローバル教養学部非常勤講師等を歴任。最近の著書として、『日豪の安全保障協力ー「距離の専制」を越えて』(勁草書房、2022年)など。
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