【Analysis】ロシアの拒否権発動で対北朝鮮制裁の執行に「暗雲」

2024年4月7日
エリア: アジア
韓国北部・坡州(パジュ)市の「統一展望台」から見た非武装地帯周辺[2022年10月6日](C)REUTERS/Kim Hong-Ji
ロシアは3月28日、国連の北朝鮮制裁を監視する多国籍専門家パネルの任期延長(毎年更新)に対して、国連安全保障理事会で拒否権を行使した。パネルの事実上の解散につながるロシアの行動は、制裁執行が「厳しい見通し」になったことを示していると、パネルの元メンバー3人がロイターに語った。

[ソウル発/ロイター]北朝鮮にとって唯一の軍事同盟国であり、最大の貿易相手国である中国は棄権した。韓国の統一省は、ロシアの拒否は「極めて遺憾」であると評した。パネルは北朝鮮の核兵器と弾道ミサイル開発に対する国連の制裁を過去15年間監視してきた。現在の任期が切れる4月30日までに、任期更新のための新たな決議が行われる可能性は低いと外交関係者たちは見ている。

 中国とロシアは制裁破りを否定するが、これまでも国連安保理の新たな制裁決議を妨げ、また制裁の一部を解除することを唱えてきた。緊張を高めているのは西側諸国だというのがその理由だ。今回のロシアによる拒否権行使は、北朝鮮にとって滅多にない外交上の得点であり、対ロ関係深化の証左でもある。米韓当局者と独立系アナリストの分析によれば、北朝鮮はロシアに対してウクライナ攻撃に使う弾道ミサイルと弾薬をかつてない規模で輸出し、代わりに燃料供給を受けている可能性がある。

 ロシアと北朝鮮はこの武器供与の存在を認めないものの、軍事関係の強化は隠していない。また、ウラジーミル・プーチン大統領の側近であるセルゲイ・ナルイシキン対外情報庁(SVR)長官が3月25日から27日まで北朝鮮を訪問し、「外部勢力が圧力を増している」ことに対して共闘することを約束した。

 今回の安保理採決は北朝鮮に対する国際的な制裁体制の大きなターニング・ポイントになると、パネルの元メンバーで現在は英王立防衛安全保障研究所(RUSI)で制裁専門家として働くアーロン・アーノルドは見る。「ロシアの拒否権と、通常兵器を北朝鮮から購入するというあからさまな制裁違反、何年も義務を無視してきた過去に加えて、中国が少なくとも暗黙の支持をしていることを考えると、北朝鮮制裁体制の未来は暗い」とアーノルドは言う。

パネル報告書は「大きなパズルの中の一部」

 安保理での投票に先立って、ロシアのワシーリー・ネベンジャ国連大使は専門家パネルの報告書について「西側のアプローチを盲信し、偏見に満ちた情報を転載し、新聞の見出しを分析して、お粗末な写真を載せる」と批判した。確かにパネルの支持者でさえ、その作業がますます強い制約を受けていることは認めている。ただしそれは、中ロのパネル参加者が都合の悪いことは載らないようにしたり、わざとわかりにくくしているためだという。

「最新の報告書はとても興味深い。なぜなら、金融と海外労働者について有益な詳細情報が載っているのに、中国がほとんど登場しないからだ」と語るのは、匿名で取材に応じたパネルの元上級メンバーの専門家だ。……

カテゴリ: 軍事・防衛 政治
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