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2021年9月に米国、英国、豪州の3カ国による安全保障協力枠組みであるAUKUSが発表されてから、それに関する国際的関心は尽きることがない。AUKUSの第1の柱である米英両国による豪州の原子力潜水艦取得のための協力については、米国での原潜建造能力の逼迫が大きな問題として議論されている。AI(人工知能)やサイバー、量子などの先進防衛技術に関する第2の柱に関しては、日本との協力の可能性などが言及されることが増えている。
以下では、そうした最新の情勢からは一歩退き、AUKUSの本質を考えてみたい。結論からいえば、AUKUSは「ファミリー・ビジネス」として捉えるのが、その性質を最も端的に示す方法だ。内部の結束が強固である反面、域外との垣根が高くなりがちであるのも、家族という性質に沿って考えると理解しやすい。さまざまな要素を順番に検討してみることにしよう。
「同盟ではない」論が含む政治的メッセージ
AUKUSが何であり何でないのかについては、いまだに論争が続いている。この観点では、同盟であるのか否かが特に問われてきた。
「同盟ではない」という観点では、AUKUSがあくまでも技術協力促進の枠組み(technology accelerator)だと指摘される。ただし、こうした主張は、必ずしも額面どおりにとってはならない。というのも、そこには政治的メッセージが含まれることが少なくないからである。純粋に技術的側面を強調する目的である場合もあるが、AUKUS参加によっても主権が損なわれることはなく、米国への隷属でもないという、想定される批判に先回りして応えるという意図も指摘できる。
この傾向は特に豪州で強く、実際、AUKUSをめぐっては、豪州の主権をいかに確保できるかが問われ続けてきた。この観点では、AUKUSは従来以上のコミットメントを伴うような新たな同盟ではなく、技術的協力に「すぎない」とする方が都合がよい。
「同盟ではない」論には、AUKUSへの批判的、ないし懐疑的見方が根強い東南アジア諸国への対応という外交的考慮も指摘できる。新たな同盟だとすれば角が立つために、そうしたイメージを和らげる狙いがありそうだ。
「同盟未満」ではなく「同盟より上」
他方で、AUKUSは単なる技術協力ではなく、戦略的決定に基づく同盟のさらなる進化・深化であることも事実である。……
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