そもそも笑止千万だった「ほぼトラ論」:「分断+僅差」の大統領選、かつてない大接戦で終盤へ

執筆者:前嶋和弘 2024年8月30日
エリア: 北米
「ハリスが急伸」「トランプが失速」いずれも正確な表現とは言い難い (C)AFP=時事
トランプのバイデンに対するアドバンテージ「支持率最大3ポイント+α」は、前回・前々回の大統領選と比較しても「僅差」のシグナルに他ならない。銃撃事件でも状況は変わらず、「ほぼトラ」「確トラ」論は合理的な理由に欠けている。社会が深く分断されると同時に、共和/民主支持が極めて拮抗する中では、接戦はもはや動かし難い構造だ。それは、目下は上げ潮のハリスにとっても、「伸びしろ」への期待だけでは戦い続けられないことを意味している。

 アメリカ大統領選挙は11月5日の投開票まで2カ月となり、一気に本格化しつつある。民主党大会を経て、カマラ・ハリスの勢いは続いていくのか。一方、失速気味ともみえるドナルド・トランプは、どう巻き返すのか。混戦が予想される大統領選挙の行方を展望したい。

互角の戦い

 最初から結論を言いたい。本稿を書いている8月末の世論調査の数字をみると、「トランプ対ハリス」は、どう考えても全く互角だ。それだけでない。おそらく当面は決め手がなく一進一退の流れとなるのではないか。

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カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
前嶋和弘(まえしまかずひろ) 上智大学教授 静岡県生まれ。上智大学外国語学部英語学科卒、ジョージタウン大学大学院政治学部修士課程修了(MA)、メリーランド大学大学院政治学部博士課程修了(Ph.D.)。専門は現代アメリカ政治外交。アメリカ学会会長。主な著作は『キャンセルカルチャー:アメリカ、貶めあう社会』(小学館、2022)、『アメリカ政治とメディア』(北樹出版、2011年)、『アメリカ政治』(共著、有斐閣、2023年)、『危機のアメリカ「選挙デモクラシー」』(共編著、東信堂、2020年)、『現代アメリカ政治とメディア』(共編著、東洋経済新報社、2019年)、Internet Election Campaigns in the United States, Japan, South Korea, and Taiwan (co-edited, Palgrave, 2017)など。
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