石破「大敗政権」を包む無風の嵐

Foresight World Watcher's 5Tips

執筆者:フォーサイト編集部 2024年11月3日
エリア: アジア 北米
自民党が「部分連合」を目指す国民民主党については、まだこれといった分析や論評が見当たらない[自民党本部での記者会見で頭を下げる石破茂総理=2024年10月28日](C)時事

 10月27日の衆院選は、自民党は公示前から56議席減、自民・公明両党でも過半数割れという結果になりました。歴史的大敗なのは事実ですが、「石破茂総理は憲政の常道に従い辞任せよ」と迫るメディアの議論はどこか空回りの印象があります。内閣支持率は急落ながら、共同通信が10月28、29日に行った緊急世論調査では「辞任不要」が65.7%に上ったからです。

 この無風の嵐をどう見るべきなのか。海外の主要メディアの分析も実はあまり切れがなく、石破退陣の可能性を指摘し「改革の停滞」を憂慮しつつも、たとえば選挙直後の株価上昇の説明には苦労している印象です。

 ただ、他方で立憲民主党の党勢増を評価する声も見当たらず、たとえば英「フィナンシャル・タイムズ(FT)」紙などは「日本にとっても自民党にとっても、有能で社会的にリベラルな野党が政権を奪う競争はプラスになる。だが、残念なことに今年の結果は違うものだった」として、立民が選挙で打ち出した公約をほとんど評価しない様子。間近に迫ったアメリカ大統領選に混乱も予想される中、日本政治に空白が生まれるよりは、「大敗政権」でも継続してくれたほうがマシというところでしょうか。

 フォーサイト編集部が熟読したい海外メディア記事5本、皆様もよろしければご一緒に。

Japan's unfortunate political limbo【Editorial board/Financial Times/10月30日付】

Japan's Political Shakeup【Editorial Board/Wall Street Journal/10月28日付】

「新たな政治スキャンダルや短期間で交代する首相が相次いだ結果、先週末[10月27日]の緊急選挙で自民党は、そこまで決定的ではないにせよ、[2009年の総選挙に続いて]再び敗北を喫した。日本にとって選挙による競争があることは健全なことだ。しかし、経済、人口動態、安全保障上の課題がかつてないほど大きくなっているこの時期に、弱体でまとまりのない政府が誕生してしまうという危険がある」
「石破には、LDP[自民党]の不調の責任を取って辞任すべきだとの圧力がかかっている。しかし、直ちに退陣すれば連立協議が遅れ、投票した有権者全員を侮辱することになり、また、日本の安全保障上不可欠なパートナーである米国が新たな大統領を選出しようとしているこの時期に、日本に首相不在の状態が生まれることになる。石破は、今のところは留任し、連立をまとめ、予算を成立させ、政治資金改革で何らかの進展を図るのが得策だろう」
「野党のCDP[立憲民主党]は意気揚々としているが、あまり浮かれすぎてはならない。148議席という数字は、依然として自民党に大きく水を開けられている。さらに深刻なのは、これは彼らへの投票ではないということだ。日本社会におけるポピュリズムの台頭や激変を示すものではなく、むしろLDPへの嫌気が投票に表れた結果だ。CDPが次に勝利を収めたいのであれば、[経済・エネルギー・安保などの政策面で政権奪取に]本気であることを示さなければならない」

 これは、日本の総選挙の結果についてFT紙が10月30日付の社説「日本の不幸な政治的空白」で示した分析だ。米「ウォール・ストリート・ジャーナル」紙も10月28日付の社説「日本の政界に激震」で次のような見方を打ち出している(本文、見出しとも引用は同誌日本版10月29日付より)。

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カテゴリ: 政治
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