Weekly北朝鮮『労働新聞』
Weekly北朝鮮『労働新聞』 (127)

休戦72年、対韓・対米強硬姿勢の裏で約30年ぶりに「平壌・モスクワ直行便」再開(2025年7月27日~8月2日)

執筆者:礒﨑敦仁 2025年8月4日
タグ: 北朝鮮 金正恩
エリア: アジア
北朝鮮側から米国に対して譲歩する姿勢は示していない[中国人民志願軍の参戦を記念した「友誼塔」を訪れた金正恩国務委員長=2025年7月26日](C)EPA=時事
朝鮮戦争休戦記念日を迎え、金正恩が中国人民志願軍の参戦を記念した「友誼塔」を訪れた。他方、1990年代に途絶えていた平壌・モスクワ間の直行便が再開され、朝露の新たな同盟関係を再認識させた。【『労働新聞』注目記事を毎週解読】

 朝鮮戦争休戦から72年を迎え、関連記事が多く掲載された。7月27日付1面トップでは、金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が祖国解放戦争勝利記念館を訪問し、「神話的な戦争業績」こそが金日成(キム・イルソン)主席の中核的な業績であると述べたことなどが紹介された。「必ずや富国強兵の大業を成就し、反帝反米対決戦でも栄誉ある勝利者になる」といった言及も見られる。

 続いて第1面下段には、朝鮮人民軍第4軍団第28歩兵師団第16砲兵連隊第3大隊第2中隊の指揮官、兵士とともに金正恩が記念写真を撮ったことが報じられた。23日に同部隊の戦闘員が射撃訓練競技で優勝し、今回の「戦勝」祝賀行事に特別招待されたものである。

 第2面には、金正恩が祖国解放戦争参戦烈士墓を訪問したとの記事が掲載された。「大きな犠牲を払って貴い勝利を収めた人民軍烈士の永生を祈願」して赤いバラ一輪を献花し、朝鮮戦争に参戦した老兵たちが健康で安らかな余生を送ることを望むといった労いの言葉を口にした。

 第3面上段には、金正恩が崔善姫(チェ・ソニ)外相や金成男(キム・ソンナム)朝鮮労働党中央委員会国際部長とともに、中国人民志願軍の参戦を記念した「友誼塔」を訪れ、その「戦闘的偉勲と功績を永遠に忘れない」とした。中段には「偉大な戦勝7・27は主体(チュチェ)朝鮮の不敗性と強大性の象徴として永遠に光を放つであろう」と題する社説も掲載された。

 28日付は4ページを使って「祖国解放戦争期の象徴縦隊による記念行進儀式」の様子を報じた。昨年とは異なり、今回は金正恩の出席がなかった。抗日パルチザン運動や朝鮮戦争に貢献した軍人が称えられ、「革命の開拓世代、戦勝をもたらした英雄世代」の精神継承が訴えられた。

 29日付第3面では、平壌(ピョンヤン)・モスクワ間の直航便が約30年ぶりに再開されたことについて報じられた。28日に最初の便が平壌国際飛行場に着陸したことを記念して開催されたイベントには、尹正浩(ユン・ジョンホ)対外経済相らが参加した。
この第一便には、ロシアのアレクサンドル・コズロフ天然資源環境相が搭乗していた。コズロフは尹正浩のほか、朴泰成(パク・テソン)内閣総理とも会談を行った。

金与正副部長が韓国との対話を完全拒否

『労働新聞』には転載されなかったが、金与正(キム・ヨジョン)党中央委員会副部長が立て続けに対韓、対米談話を発表したことにも触れておきたい。

カテゴリ: 政治
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
執筆者プロフィール
礒﨑敦仁(いそざきあつひと) 慶應義塾大学教授。専門は北朝鮮政治外交。1975年生まれ。慶應義塾大学商学部中退。韓国・ソウル大学大学院博士課程に留学。在中国日本国大使館専門調査員、外務省第三国際情報官室専門分析員、警察大学校専門講師、米国・ジョージワシントン大学客員研究員、ウッドロー・ウィルソンセンター客員研究員など歴任。著書に『北朝鮮と観光』(毎日新聞出版)、『北朝鮮を読み解く』(時事通信社)、共著・編著に『最新版北朝鮮入門』(東洋経済新報社)、『北朝鮮を解剖する』(慶應義塾大学出版会)など。
  • 24時間
  • 1週間
  • f
back to top