官邸幹部「核保有発言」に海外メディアの反応は?
Foresight World Watcher's 4+5 Tips
首相官邸の幹部が個人の見解として「日本は核兵器を保有すべきだ」と発言した問題について、中国、ロシア、北朝鮮の当局発表を別にすれば、海外の反応は限定的です。オフレコ前提の取材とはいえ、日中関係が緊張する中で政府高官がこの“発信”をしたことは軽視されるべきではありませんが、海外メディアの多くは日本政府が非核三原則の堅持を再確認したと伝えて報道を一区切りしています。
ただ、それは日本の核武装を絵空事と見做すからではなく、むしろ議論自体はさして珍しくないからだと思われます。日本や韓国の核兵器保有は、アジアの厳しい安全保障環境や米国の拡大抑止の行方と一体になって、すでに何度も議論の俎上に載せられています。たとえば、故ヘンリー・キッシンジャー氏は「日本は5年以内に核保有国になる」と2023年に語っています。直近でも、シンガポールの元外務次官であるビラハリ・カウシカン氏がこの問題について日本で講演した内容が、「フォーリン・ポリシー(FP)」誌に抜粋記事として出ています。
今回はそのカウシカン論考に加えて、米トランプ政権がこのたび発表した台湾に対する過去最大規模の武器売却に関する記事など4本をピックアップ。さらにホリデーシーズン恒例の各メディア読書企画を5本ご紹介します。
皆様もよろしければご一緒に。
[World Brief]U.S. Announces Largest-Ever Arms Deal With Taiwan【Alexandra Sharp/Foreign Policy/12月18日付】
US approves $11bn arms sale to Taiwan【James Politi/Financial Times/12月18日付】
「水曜[12月17日]、トランプ政権は台北向けとして米国史上最大の兵器[売却]パッケージを発表した。総額111億ドルに上るこの契約には、高機動ロケット砲システム(通称HIMARS)とM109自走榴弾砲がそれぞれ40億ドル以上、ジャベリン・トール対戦車ミサイルおよび多用途小型ドローンのアルティウスが計7億ドル以上という顔ぶれが含まれる」
「これはトランプ政権下で2度目となる米国による台湾への武器売却であり、米議会で承認される可能性は高く、そうなればバイデン政権下で台北に売却された武器の総額84億ドルを上回る見込みだ」
米FP誌の日刊ニューズレター「ワールド・ブリーフ」は12月18日付の「米、過去最大の台湾向け兵器取引を発表」で、このように伝えた。
筆者の同レター担当記者、アレクサンドラ・シャープはこの計画を、トランプ政権が最近進めてきた米中融和に向けての努力を「危うくするおそれのある」ものだと位置づけ、「インド太平洋地域における、すでに危険な発火点をさらに剣呑なものにしかねない」と危惧する。
英「フィナンシャル・タイムズ(FT)」紙のワシントン支局長、ジェームズ・ポリティも「米、台湾への110億ドル規模の兵器売却を承認」(12月18日付)で同様の懸念を示しつつ、台湾側の事情も紹介する。
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