税調を押し切り「年収の壁」で譲歩
それは急転直下の決着だった。
高市「私自らが、強い経済を構築する観点から、所得を増やして消費マインドを改善して事業収益が上がる、そういった好循環を実現するために最終的な判断を下した」
国会内の自民党の会議室で高市早苗総理は、国民民主党が求める「年収の壁」の見直しについて、自らがトップダウンで決定を下したことを明かした。
高市が国民民主党の玉木雄一郎代表との党首会談に臨んだのは、今月18日の夕方のことだった。それまで実務者レベルでの協議では、所得税がかかり始める金額を年178万円まで引き上げること自体は合意したものの、一定以上の年収がある国民はその対象外とされ、中間層まで幅広く対象とすることを求める国民民主と、財源の問題から拡大に慎重な自民党とで着地点が見つからなかった。自民党関係者はこう語る。
「午後の早い段階までは(合意に達するのは)とても無理だった。しかし高市さんが一気に押し切った」
玉木もこの決定について「3分の1ぐらいはトップ同士の話し合いで決まった」と語るなど成果を強調した。
両党首の会談によって、対象となる年収の上限は2026年から27年に限り665万円まで引き上げられた。納税者の約8割が対象となる。会談後の会見で玉木は「国民の皆さんから託されたミッション、コンプリートということで一つの区切りを迎えることができた」と語り、高市が玉木の要求を丸呑みしたと言って良いだろう。高市の決断に自民党内、特に税制調査会の関係者からは「これでは積み上げ式の自民党税調は必要なくなる」と落胆の声が上がっている。
年度内に「国民民主が連立入り」も
今回の「年収の壁」引き上げ決定に際して、高市が強調したのが「政治の安定」だった。自民党単独では衆・参いずれも過半数に到達しない現状では、連立を組む日本維新の会に加えて、政策面で比較的折り合いがつく国民民主党との距離を詰めていくことが高市の基本スタンスとなるであろう。
果たして、接近する自民と国民民主がこのまま連立に至る可能性はあるのだろうか。
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