[イラン戦争はどこまで続くか]米・イスラエル・イランの「制約条件」から見たシナリオ

執筆者:滋野井公季 2026年3月4日
エリア: 中東
イランの継戦能力は限界に近づいている可能性が高い[2026年3月1日、イラン・テヘラン](C)AFP=時事
トランプ大統領の示した「4週間〜5週間」は、米軍のミサイル迎撃システムの弾数リミットからある程度説明できる。イランは保有弾道ミサイルのすでに5分の1強を使用し、かつ多数の発射基や生産能力を破壊されたと考えられる。こうした能力的制約は米国とイランが比較的早期に出口を模索する可能性を示唆するが、イスラエルには優位性を拡大できる局面ほど作戦継続の誘因が強まるだろう。イランはこのシナリオを念頭に置いて、湾岸諸国のエネルギー施設やホルムズ海峡に攻撃目標に移し、アメリカや世界からの圧力でイスラエルを止めようとしているのではないか。

 2026年2月28日に米・イスラエルの攻撃によって始まったイラン戦争は、本稿執筆時点(3月4日午後)でも明確な出口が見えない。イラン側の報復は中東全域におよび、イスラエル本土や域内の米軍のみならず、湾岸諸国のエネルギー関連施設やインフラも標的とし、ホルムズ海峡も実質的に航行不能な状況に陥っている。

 本稿の焦点は各国指導者の意思や修辞の分析ではなく、戦争の出口を規定する「制約条件」の整理にある。とりわけ、①ミサイルと迎撃弾の消耗レース、②米国の作戦継続を縛る法的な時間制約、③世界経済への波及が生む外圧という3つの時間軸を抑えることで、短期終結・長期化の現実的な幅が見えてくる。

アメリカ視点のベースシナリオ:2〜4週間(最大2カ月)

 まずはアメリカの観点から、ベースシナリオを素描してみたい。米国の作戦期間は、第一に作戦に投入する戦力に左右される。開戦前の分析では、イスラエルの情報当局者は、中東方面の配備と弾薬・迎撃システムの制約から米軍の継戦能力を高強度の攻撃の場合4〜5日間、低強度の攻撃でも最大1週間程度と評価していた。米軍は巡航ミサイルや精密スタンドオフ攻撃などで最初の24時間で1000以上の標的を攻撃している。これは相当なハイペースで米軍がミサイル兵器を消費していることを意味する。

 開戦当初から米・イスラエルの軍事目標は「体制転換」だと説明され、実際に初撃であり-・ハーメネイー最高指導者や政府・軍高官を一挙に葬った。3月2日にドナルド・トランプは作戦の目標を①ミサイル能力、②イラン海軍戦力、③核開発能力、④イラン体制が代理勢力等に資金や武器を提供する能力、を奪うことだと説明した。昨年6月の「12日間戦争」の目的も「体制転換」と「非核化」とされたが、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相にせよトランプにせよ、明確な戦争の帰結に関するビジョンを持たないまま開戦したという指摘があり、トランプの開戦判断についてもマルコ・ルビオ米国務長官はイスラエル攻撃への報復が米軍に及び得るため先制攻撃したものだと吐露している。したがって、明確な出口は示されていない。

 作戦期間は第二に、防空・迎撃能力の弾数制約に引きずられる。

カテゴリ: 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
滋野井公季(しげのいこうき) 東京大学大学院情報学環・学際情報学府客員研究員 1991年生まれ。専門は国際政治、経済安全保障、イスラーム政治思想。同志社大学大学院グローバル・スタディーズ研究科博士課程満期退学。アルジャジーラ研究所客員研究員、ハマド・ビン・ハリーファ大学人文社会科学研究科客員研究員、外務省専門分析員、コンラート・アデナウアー財団リサーチ・アソシエイト、政策研究大学院大学リサーチ・フェロー、東京大学公共政策大学院共同研究員などを経て現職。
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