「悪い意味での権利意識」が介護サービス事業者の経営を圧迫している 四月からスタートした介護保険。厚生省は、「目立ったトラブルは起きていない」としているが、水面下では制度の屋台骨を揺るがしかねない事態が進行している。在宅介護の主要サービスであるホームヘルプ(訪問介護)を提供する民間事業者が、相次いで事業を縮小しているからだ。その原因は、利用されるサービスが単価の高い「身体介護」ではなく、単価の安い「家事援助」に集中、事業の採算を圧迫していることにある。 安いサービスを使うのは、消費行動として当然だが、問題はその中身。要介護者の家族の分の洗濯をヘルパーにさせたり、庭の草むしりや犬の散歩など、およそ社会保険の対象とは考えにくい利用が目立つ。つまり、高齢者側の“わがまま”に事業者が翻弄されているわけだ。厚生省は医師会と違って政治力のない介護事業者の窮状には、あまり関心を示していないが、このまま採算が合わなければ、制度そのものが崩壊する危険性さえ孕んでいる。

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