李登輝訪日問題の背後で繰り広げられた日中台の攻防

執筆者:竹岡亮 2000年11月号
タグ: 日本 中国 台湾
エリア: アジア

 過去十年余り、浮上しては消え去った台湾・李登輝氏の訪日問題。今回も査証(ビザ)発給が実現しなかった背景には、中国の強い圧力に日本が屈したという従来のパターンに加え、招請に正面から立ち向かった中国問題専門家、中嶋嶺雄氏(東京外語大学長)と李登輝氏との間で微妙な意思のズレがあったようだ。日本の一学者と前台湾総統の交わりという類まれな信頼関係も、日中台のパワーゲームには対抗できなかった。 李登輝訪日問題に関して、中国側はかなり早い段階から日本に対して外交圧力をかけていた。一九七二年九月、日中国交正常化の際の「日中共同声明」の精神に照らしても、日台間の民間交流・往来は保証されている。まして今年五月に総統を引退し、国民党主席の座からも降りて、一民間人となった李登輝氏にとって、訪日は支障がないはずだった。だからこそ中国側は「李登輝は一般人とは言えない」(朱鎔基首相)との強引な論理で日本を牽制したのだった。

カテゴリ: 軍事・防衛
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