クオ・ヴァディス きみはどこへいくのか?

クローン人間という大凶事

執筆者:徳岡孝夫 2001年4月号
エリア: アジア

 世界中の人々が期待をこめ、もし世くは恐怖に震えつつ、手に汗を握って待っている――「世界初のクローン赤ちゃん誕生!」のニュースを。 二十世紀の人類は、原子を割るのに成功した。二十一世紀にはクローン技術を使って、判で押したような「そっくり人間」を生産するのだろうか。欧米の科学者が、きっと真っ先にやるはずだ。 カナダには、クローン人間の誕生を支援する宗教団体があって「今年のクリスマスまでには」産声を聞かせるという。レースはすでに始まった。生殖医学専門家たちは、いまリンドバーグの同僚の飛行士か、アラモゴード前の物理学者みたいに目の色を変えている。誰が歴史に名を刻むか? もう時間の問題である。

カテゴリ: 社会
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執筆者プロフィール
徳岡孝夫(とくおかたかお) 1930年大阪府生れ。京都大学文学部卒。毎日新聞社に入り、大阪本社社会部、サンデー毎日、英文毎日記者を務める。ベトナム戦争中には東南アジア特派員。1985年、学芸部編集委員を最後に退社、フリーに。主著に『五衰の人―三島由紀夫私記―』(第10回新潮学芸賞受賞)、『妻の肖像』『「民主主義」を疑え!』。訳書に、A・トフラー『第三の波』、D・キーン『日本文学史』など。86年に菊池寛賞受賞。
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