「不可能という意味をもたされた青いバラとは、(中略)迷い道に立つ人に、人と人、人と動物、人と植物との関わりを気づかせるための道標だったのではないかと思えてならない。 そして、今、改めて読者に問いかけたい。青いバラができたとして、それは本当に美しいのだろうかと――」(最相葉月『青いバラ』小学館刊 一六〇〇円) 花屋に並ぶ色とりどりのバラの中に、青い花はない。青い色を出す色素を持たぬがゆえであり、「青いバラ」という言葉には事典において「不可能」なる意味合いまで与えられた。しかしながら、遺伝子操作技術の発達により、この幻の花が咲き誇る日もそう遠くないと報じられている。『絶対音感』で知られる著者はそのニュースに違和感を覚え、そして自らの違和感を解き明かそうと思い立つ。

「フォーサイト」は、月額800円のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。
フォーサイト会員の方はここからログイン