「テロはアメリカ・ユダヤの陰謀」といった言説がアラブ世界ではいまだ支配的だ。非現実的な状況がなぜ続くのか。現代アラブ思想の潮流に理由を探った。 テロを一つの帰結として持つような心性を社会が胚胎してしまったという事実にどう立ち向かい、克服するか――。 これはテロ後のアラブ思想の大きな課題であり、9.11事件はアラブ世界に自己検証を促す機会となりえたはずだ。少なくともテロの実行犯がアラブ諸国の人間であり、イスラーム教の特定の解釈に支えられていたことは間違いない。逸脱した精神状態の者が予測不可能な事件を起こしたものでもない。しかし、アラブ世界では、テロという行動は別としても、それを正当化する論理展開自体はごく当然のものと受け止められている。

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