海の向こうからいいものが来たことはない――これは、先ごろ刊行した『アラブの格言』(新潮新書、五月刊)に収録した言葉の一つです。アラブの地と異なり、日本は四方を海に囲まれているから、来るものは悪しきことばかりではもちろんありません。しかし、たとえば日本の海域にはずっと不審な船が往来していた訳で、一昨年十二月に海上保安庁の巡視船と銃撃戦の末に自爆沈没した船は、武装した北朝鮮の「工作船」で、今度その仕様や武器が明らかになりました。 今、東京の「船の科学館」で、大変な苦労の末に九十メートルの海底から引き揚げられた「工作船」とその銃器類千点余りを展示していますが(九月三十日まで)、あらためて海の向こうの北朝鮮という国家の存在を実感します。
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