六本木ヒルズ事故を生んだ「王の驕り」

執筆者:安西巧 2004年5月号
エリア: アジア

絶頂期から一転、森ビル社長は死亡事故の責任と経営責任を追及される立場となった。安全対策を怠ったツケは重い。「私どもはいま、何をすべきかが問われている。様々な角度から検証し、お子様や高齢者、障害者の方々にとって真に安全で快適な街を実現すべく、全社総力を挙げて取り組まねばならない」 四月一日の森ビルの入社式。冒頭、新入社員三十七人を含む出席者全員が黙祷した後、社長の森稔(六九)はこう訓示した。会場は六本木ヒルズ・森タワー内にある本社会議室。本来晴れやかなものになるはずだった新入社員の門出は、前週の痛ましい事故で暗転してしまった。

カテゴリ: 社会 経済・ビジネス
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
執筆者プロフィール
安西巧(あんざいたくみ) ジャーナリスト 1959年福岡県北九州市生まれ。1983年早稲田大学政治経済学部政治学科卒、日本経済新聞社入社。主に企業取材の第一線で記者活動。広島支局長、編集委員などを歴任し、2024年フリーに。フォーサイトでは「杜耕次」のペンネームでも執筆。著書に『経団連 落日の財界総本山』『広島はすごい』『マツダとカープ 松田ファミリーの100年史』(以上、新潮社)、『さらば国策産業 電力改革450日の迷走』『ソニー&松下 失われたDNA』『西武争奪 資産2兆円をめぐる攻防』『歴史に学ぶ プロ野球16球団拡大構想』(以上、日本経済新聞出版)など。
  • 24時間
  • 1週間
  • f