チュニジアに端を発した中東の民主化要求の民衆蜂起の波はエジプトのムバラク政権を追い詰め、さらにヨルダン、シリアなどにも波及しつつある。まさに1989年の「東欧民主化」を彷彿とさせる大変動の予感も漂う。ただ、今回のエジプト騒乱が世界に与える影響を考えたとき、少なくともひとつ違っているのは中国共産党の示す態度だ。 中国共産党にとって「東欧民主化」は今でも苦さの残る言葉だ。言うまでもなく、東欧民主化に刺激されて89年6月4日の天安門事件が起きたからである。一般市民や学生を武力鎮圧し、数百人の犠牲者を出した事件で中国が受けた打撃は、国際的な非難と経済制裁だけではない。犠牲者の遺族はもちろん中国社会にも深い傷を残し、共産党不信の種子を播く結果となった。その後遺症の重さは、昨年のノーベル平和賞受賞者の劉暁波氏に対する中国政府の対応がよく示している。
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