東京電力の福島第1原発事故は、幅広い影響を世界のビジネスに与えた。原子炉など原子力産業の先行きに暗雲が広がり、石油、天然ガス、石炭など化石燃料に追い風が吹いていることは言うまでもない。そのなかで注目すべきは天然ガスであり、世界最大の液化天然ガス(LNG)輸出国、カタールが危機の瀬戸際から復活したことに目をむけておくべきだろう。 3月11日以前には、カタールのLNGビジネスは手詰まりになりかねない状況だった。2010年に目標としていた年産7700万トンのLNG輸出能力を構築したものの、LNG需要は世界的に低迷、新規に立ち上がった液化プラントの長期契約がなかなか決まらない状況だったからだ。インドやバングラデシュなど買い手として不安感のある顧客にまで話を持ち込まざるを得ない状況だった。安値のスポット輸出で何とか稼働率を高めようとしたものの、かえってLNGの長期契約への信頼性を損ないかねなかった。

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