「予知に失敗した地震学者にイタリアで実刑判決」――新聞にこんな見出しが躍り、テレビのワイドショーでは、アナウンサーが「予知に失敗すると科学者は罪に問われるのでしょうか」などと、首をかしげて見せた。 10月22日、イタリア中部にあるラクイラの地方裁判所が下した判決について、日本のマスメディアの一部は、上記のようなトンデモ報道を繰り返した。地震国日本のメディアの、地震科学に対する恐るべき無知と無理解が、このニュースの伝え方に凝縮している。 「予知に失敗した学者」というフレーズ自体が、すでに明らかな誤報である。なぜなら、禁固6年の判決を言い渡されたイタリアの地震学者と防災当局者7人は、誰一人として地震予知などにかかわっていないからだ。予知の試みすらしていない。実行しておらず、意図すらしていない地震予知に、彼らが失敗することは、物理的にも論理的にも絶対不可能である。 今回、ラクイラ地裁で裁かれたのは、「予知の失敗」などではなく、「科学的根拠のない安全宣言もどき」によって地震被害を拡大させた罪(過失致死)である。
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