イエメンの軍再編は新体制への一里塚

執筆者:池内恵 2012年12月26日
エリア: 中東

 イエメンで12月19日に、軍の機構の大幅な再編策が発表された【「イエメンの大統領が軍の再編で政敵の権力を削ぐ」ロイター12月19日】【「ハーディー大統領が再編を推し進める」イエメン・タイムズ12月24日】【イエメン国営通信社の伝える大統領令の原文】。イエメンの新体制への移行への最大の課題は、サーレハ前大統領の親族が軍中枢の要職を押さえ、国軍全体の指揮命令系統に服さない、各種の精鋭部隊・特殊部隊を複数編成して政権を護持してきた点をどう克服するかである。サーレハの息子や兄弟や従弟や甥などが、揃って軍の要路のポストや部隊司令官に就任し、「ファミリー・ビジネス」のように軍を掌握してきた。これは国家と国民の統合を阻害してきた。

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執筆者プロフィール
池内恵(いけうちさとし) 東京大学先端科学技術研究センター グローバルセキュリティ・宗教分野教授。1973年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得退学。日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員、国際日本文化研究センター准教授を経て、2008年10月より東京大学先端科学技術研究センター准教授、2018年10月より現職。著書に『現代アラブの社会思想』(講談社現代新書、2002年大佛次郎論壇賞)、『イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社、2009年サントリー学芸賞)、『イスラーム国の衝撃』(文春新書)、『【中東大混迷を解く】 サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』 (新潮選書)、 本誌連載をまとめた『中東 危機の震源を読む』(同)などがある。個人ブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝」(http://ikeuchisatoshi.com/)。
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