1853年7月、ペリー率いる黒船艦隊4隻が江戸前に侵入、艦砲で江戸城に向け空砲を発射して威嚇、日本に開国を脅迫した。知見が高ずれば、所謂砲艦外交と見るであろうが、海軍の儀礼や米国の独立記念日を知らない江戸の住人にとっては脅し以外の何物でもなかった。
「泰平の眠りを覚ます上喜撰たった四杯で夜も眠れず」と狂歌にあるが、この事件を日本国に対する脅威と受け止め、その対処に苦慮して眠れなかったのは、日本の人口の10%にも満たない武家の、それもごく一部であった。江戸の庶民は酒肴を持って猪牙舟を繰り黒船見物に出かけたというから、90%の百姓町民に安全保障意識が乏しいというのは今と変わらない。

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