80時間世界一周 (14)

香港名物「メードさん」賃金引下げの事情

執筆者:竹田いさみ 2005年10月号
エリア: アジア

 日曜日の過ごし方は、「公園に行って友達に会うこと」――これが香港在住のフィリピン人とインドネシア人の共通した答えだ。香港島の公園や広場を日曜日に巡ってみると、お弁当やお菓子を持参した女性の集団が公園を“占拠”している姿をよく目にする。 たとえば香港島のショッピング街に近いヴィクトリア公園。この公園はインドネシア人の住込みのお手伝い(メード)さんが、日曜日に大挙して集合する「名所」で、静寂さとは無縁だ。埠頭の方へ足を運ぶと、欧米人の長期滞在者がセーリングを楽しむヨットクラブもある。国際問題のコラムニストとして著名な英国人フィリップ・ボウリングは常連客の一人だ。日本人の観光客は、こうした公園に足を踏み入れることはない。モーニングティーを飲みながらゆったりした気分に浸りたいと思っても、女性たちのお喋りで喧噪状態の中ではその夢は叶わないのだ。

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執筆者プロフィール
竹田いさみ(たけだいさみ) 獨協大学外国語学部教授。1952年生れ。上智大学大学院国際関係論専攻修了。シドニー大学・ロンドン大学留学。Ph.D.(国際政治史)取得。著書に『移民・難民・援助の政治学』(勁草書房、アジア・太平洋賞受賞)、『物語 オーストラリアの歴史』(中公新書)、『国際テロネットワーク』(講談社現代新書)、『世界史をつくった海賊』(ちくま新書)、『世界を動かす海賊』(ちくま新書)など。
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