クオ・ヴァディス きみはどこへいくのか?

日本を見下す元高級紙NYタイムズ

執筆者:徳岡孝夫 2005年11月号
エリア: 北米

 町に新しいビルが建つと、建つ前そこに何があったか、なかなか思い出せない。たとえば霞が関ビル。昔あそこには何が立ち、どんな風景があったか? 都市生活者は新しいビルの前にたたずみ、失われた記憶を取り戻そうと試みて途方に暮れる。 桑田変じて滄海となる。まだ朝日新聞社が数寄屋橋にあった頃の話である。私は頼まれて「ニューヨーク・タイムズ」に何回かコラムを書いた。パソコンやファクスが発明される前だから、毎回タイプライターで打ったのを持って朝日新聞社へ行った。裏のエレベーターで六階だか七階だかに行くと、NYタイムズの支局がある。私の記事は、そこからテレックスでニューヨークへ行ったと記憶している。

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執筆者プロフィール
徳岡孝夫(とくおかたかお) 1930年大阪府生れ。京都大学文学部卒。毎日新聞社に入り、大阪本社社会部、サンデー毎日、英文毎日記者を務める。ベトナム戦争中には東南アジア特派員。1985年、学芸部編集委員を最後に退社、フリーに。主著に『五衰の人―三島由紀夫私記―』(第10回新潮学芸賞受賞)、『妻の肖像』『「民主主義」を疑え!』。訳書に、A・トフラー『第三の波』、D・キーン『日本文学史』など。86年に菊池寛賞受賞。
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