クオ・ヴァディス きみはどこへいくのか?
情けは人のためならず
新聞社の特派員として私がバンコクに駐在していたときの話である。1960年代の後半。土曜日の午後、われわれ外国人特派員は、サマセット・モームゆかりのオリエンタル・ホテルが提供した客室「記者クラブ」に集り、悠揚たるチャオプラヤ川を眺めながら夕方までを飲んで過した。それは情報交換の場でもあった。
英語を喋れるタイ人記者も来た。かなり酒が回った日のこと、タイ記者の1人が私に質問した。
「日本人は賢い民族だ。テープレコーダーでも何でも、最高のものを作る。それなのになぜ、風が吹いただけで人が何人も死ぬんだ」

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