「こんな洒落た場所があったのかー」と、建物に足を一歩踏み入れた瞬間、思わず口から言葉が出た。ここはイランの首都テヘラン市内の高台にあるカフェレストラン。二〇〇二年秋に「スポーツ・リクリエーション・コンプレックス」として開業したが、「看板に偽りあり」だ。たしかに一階にはビリヤードルームがある。しかし二階はテラスカフェ、三階もテラスレストランで、スポーツなどより明らかにカフェレストランが主体である。眺めのよい特等席に座ってコーヒーを啜りながら市内を見下ろすと、テヘランに居ることを忘れてしまう。 というのも、昨晩訪れたイラン料理の民族レストランと比較してしまったからだ。「イランの伝統料理と音楽を堪能して下さい」と、イラン人の知人に強く勧められて、地元で人気のあるレストランに足を運んでみた。たしかに、外国人観光客向けの“民族レストラン”ではなさそうだ。店内は中産階級のイラン人家族で満席状態。だが、食事にいっさい期待してはいけないという直感がはたらく。残念ながら的中してしまった。
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