タイの華字紙「世界日報」が読み解くマレーシア航空機事故の深層

執筆者:樋泉克夫 2014年4月14日
エリア: アジア

 マレーシア航空のMH370便が地上から忽然と消え去ってから1カ月余り。日本人乗客ゼロだったこともあり、日本メディアの扱いは、どこか冷めていた。だが乗客乗員239人中153人が「自己人(なかま)」である中国籍だったこともあり、華字紙は強い関心をもって報じていた。タイの『世界日報』も例外ではない。同紙は事件発生から半月ほどの間に4本の社説を掲げているが、単なる人道的視点からの主張ではなかった。

 まず、事故から100時間ほどが過ぎた3月13日、「マレーシア航空機事故における国際的救援態勢に思う」と題する社説は、人道的立場、科学技術、即応態勢、動員力からいって救援態勢の主役は中米両国だとし、「中国海軍は事故発生2日後に遭難海域に綿陽艦を出動させた後、艦船を大量投入し、李克強首相はマレーシア政府に説明責任を果たすことを強硬に求め、国内の民意に応ずる姿勢をみせる」とした後、中国は「この事故を機に、『アジアの警察』を演じようとしているのか」と、中国海軍の行動を注視する。

カテゴリ: 政治 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
樋泉克夫(ひいずみかつお) 愛知県立大学名誉教授。1947年生れ。香港中文大学新亜研究所、中央大学大学院博士課程を経て、外務省専門調査員として在タイ日本大使館勤務(83―85年、88―92年)。98年から愛知県立大学教授を務め、2011年から2017年4月まで愛知大学教授。『「死体」が語る中国文化』(新潮選書)のほか、華僑・華人論、京劇史に関する著書・論文多数。
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