ロールズが問うた「思想・信条の異なる共存」

執筆者:会田弘継 2006年10月号
エリア: 北米

 現場をはじめて訪れたのは一年後だった。整理が進んだとはいえ、ビルの倒壊跡は茫漠としていた。花束を持って訪れる人々。傷跡が生々しく残る周辺のビル群。かつてそこにあった世界貿易センタービルの巨大さを思い起こし、すでにアフガニスタンでの戦争が終わり、次のイラクでの戦争の気配が濃くなっていることを考えたとき、事件の途方もなさが迫ってきた。あれからさらに四年。アメリカも世界も、ますます迷路から抜け出せない状態となっている。 9.11テロとその後の混乱は、異なる価値観や信条を持つ人々(国々)は、いったいどのようにして争わずに共存できるのかという根源的な問いを、あらためて世界に突きつけた。古典的な問いだ。しかし、グローバリゼーションで世界がますます狭くなる今日、より重たい問いとなっている。アメリカとイスラム過激派だけでない。あの日の同時多発テロを受けて、アメリカが軍事介入に踏み切ったアフガニスタンとイラク。いずれも依然として混迷の中にある。これらの国で起きているのも、さまざまな民族・宗教の共存をめぐる問題だ。当のアメリカ自体、イラク情勢をめぐり真っ二つに割れ、異なる主張や信条が共存できないほどに軋みあっている。

カテゴリ: カルチャー
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執筆者プロフィール
会田弘継 関西大学客員教授、ジャーナリスト。1951年生まれ。東京外語大英米語科卒。共同通信ジュネーブ支局長、ワシントン支局長、論説委員長などを務め、現在は共同通信客員論税委員、関西大学客員教授。近著に『世界の知性が語る「特別な日本』』 (新潮新書)『破綻するアメリカ』(岩波現代全書)、『トランプ現象とアメリカ保守思想』(左右社)、『増補改訂版 追跡・アメリカの思想家たち』(中公文庫)など。訳書にフランシス・フクヤマ著『政治の衰退』(講談社)など。
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