クオ・ヴァディス きみはどこへいくのか?

ならず者の砦

執筆者:徳岡孝夫 2015年3月12日
タグ: 中国 韓国 日本
エリア: アジア

 ファンファーレが鳴る。「開会式を行いまーす」と、力強い声が甲子園原頭から全国に届く。それを聞いた日本全体の気分が昂揚する。国歌吹奏のうちにセンターポールに国旗が上る。

 私の誤り多い記憶によると、あの式次第は、高校野球を主催する新聞社が日本の愛国心を40数個のコマ切れにして売っていたのである。愛国心は新聞紙面でさんざん叩かれても生き残る、それほど強固なものである。

 英語にPatriotism is the last bastion of scoundrels.(愛国心は、ならず者の最後の砦)という諺がある。国を愛するのは自然である。美しい。気高い。だから多種多様なならず者が、自分は愛国者だと信じ、世間にもそう宣伝して信じさせ、愛国心のカゲに隠れて悪事を働く。愛国心は最も利用されやすい最後の隠れ蓑(最後の砦)だ、というほどの意味である。

カテゴリ: 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
徳岡孝夫(とくおかたかお) 1930年大阪府生れ。京都大学文学部卒。毎日新聞社に入り、大阪本社社会部、サンデー毎日、英文毎日記者を務める。ベトナム戦争中には東南アジア特派員。1985年、学芸部編集委員を最後に退社、フリーに。主著に『五衰の人―三島由紀夫私記―』(第10回新潮学芸賞受賞)、『妻の肖像』『「民主主義」を疑え!』。訳書に、A・トフラー『第三の波』、D・キーン『日本文学史』など。86年に菊池寛賞受賞。
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