攻守交代の米露「新冷戦」

執筆者:名越健郎 2007年8月号
エリア: 北米 ヨーロッパ

 米露関係が「新冷戦」の様相を強めている。米国のミサイル防衛(MD)東欧配備計画に反発するロシアのプーチン大統領は、「第三帝国の時代と同様に人命軽視と世界制覇を狙っている」と米国をナチス・ドイツになぞらえて攻撃。ブッシュ大統領も「改革が脱線した」と民主化後退を非難した。 7月初め、ブッシュ大統領はメーン州にある父の別荘にプーチン大統領を招く特別待遇で衝突回避を図ったが、修復には程遠い情勢。米露対立の背後には、ロシアが難色を示すセルビアからのコソボ独立問題や、エネルギー問題、ロシアの大国化や選挙を控えた国内事情もある。対テロ戦で結束したころの「米露同盟」は過去の遺物だ。

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執筆者プロフィール
名越健郎(なごしけんろう) 拓殖大学海外事情研究所客員教授。1953年岡山県生まれ。東京外国語大学ロシア語科卒業。時事通信社に入社、外信部、バンコク支局、モスクワ支局、ワシントン支局、外信部長、編集局次長、仙台支社長を歴任。2011年、同社退社。拓殖大学海外事情研究所客員教授。国際教養大学特任教授、拓殖大学特任教授を経て、2024年から現職。著書に、『秘密資金の戦後政党史』(新潮選書)、『ジョークで読む世界ウラ事情』(日経プレミアシリーズ)、『独裁者プーチン』(文春新書)、『ゾルゲ事件 80年目の真実』(文春新書)など。
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