ミャンマー「僧侶が率いたデモ」の真相

執筆者:竹田いさみ 2007年11月号
エリア: アジア

欧米やタイなどの報道だけでは、ミャンマーの実情はわからない。いま何が起こっているのか。 ヤンゴン市の中心部を埋め尽くした僧侶と市民のデモを前に、軍事政権が今度こそは倒れ、民主化勢力が政権を勝ち取るのではないかと、淡い期待を寄せた人も多かったのではないだろうか。九月二十二日、民主化指導者アウン・サン・スー・チーさんが、自身の私邸まで行進してきた僧侶に合掌し、無言ながら十五分間の対面を果たした。その写真が公開されたことで、世界中が動向を注視した。インヤ湖に面したスー・チー邸に通じる自動車道路は、幹線道路からバリケードで常に遮断されており、検問所も設置されていて、通行証がないと進入できない。僧侶のデモ隊が、この警戒厳重な検問所を平和的に突破し、スー・チーさんとの面会を果たしたことは、政治的に大きな意味があったといえよう。

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執筆者プロフィール
竹田いさみ(たけだいさみ) 獨協大学外国語学部教授。1952年生れ。上智大学大学院国際関係論専攻修了。シドニー大学・ロンドン大学留学。Ph.D.(国際政治史)取得。著書に『移民・難民・援助の政治学』(勁草書房、アジア・太平洋賞受賞)、『物語 オーストラリアの歴史』(中公新書)、『国際テロネットワーク』(講談社現代新書)、『世界史をつくった海賊』(ちくま新書)、『世界を動かす海賊』(ちくま新書)など。
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