尿の臭いがツンと鼻をつく。悪臭を放つ老人の男性器を前に思わず息を飲んだ。手が震え、涙が溢れそうになってくる――。 一九九七年、フィリピン・ルソン島出身の大石ペニャフランシャさん(四二)は神奈川県の老人専門病院で介護スタッフとして働き始めた。その直後、入院患者のおむつ交換を初めて体験したときの記憶である。「仕事だとわかっていても、どうやって(性器に)触っていいのかわからなかったんです」 大石さんにとって介護の仕事は初めてのこと。介護ヘルパー養成講座などを受けた経験すらなかった。それでも初日のオリエンテーションを終えた翌日から、おむつ交換を始め他のスタッフ同様の仕事が待っていた。

「フォーサイト」は、月額800円のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。
フォーサイト会員の方はここからログイン