クオ・ヴァディス きみはどこへいくのか?

繋ってしまった世界同時革命とはこれか

執筆者:徳岡孝夫 2008年11月号
タグ: 中国 韓国 日本

 一九八六年にソ連(当時)の原子力発電所の炉一基が爆発し、放射性ある「死の灰」を大気中に撒きちらした。日本にも一部が降った。その日まで日本人は、チェルノブイリなんて地名、見たことも聞いたこともなかった。ソ連政府が発電所の存在を機密にしていたので、地図にも出ていなかった。 もし地球上の陸という陸に降り積ったらどうしよう。地上に生える物はすべて汚染され、海の魚も汚れ、全人類が死んでいくではないか。生きている幸せも、もはやこれまで。人類は死刑執行人チェルノブイリの手にかかって死に絶える。どんな顔したヤツが犯人か、見当もつかないが、生きていた人間は、運命が否応なくチェルノブイリという未知の土地に繋っているのを知った。

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執筆者プロフィール
徳岡孝夫(とくおかたかお) 1930年大阪府生れ。京都大学文学部卒。毎日新聞社に入り、大阪本社社会部、サンデー毎日、英文毎日記者を務める。ベトナム戦争中には東南アジア特派員。1985年、学芸部編集委員を最後に退社、フリーに。主著に『五衰の人―三島由紀夫私記―』(第10回新潮学芸賞受賞)、『妻の肖像』『「民主主義」を疑え!』。訳書に、A・トフラー『第三の波』、D・キーン『日本文学史』など。86年に菊池寛賞受賞。
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