私は、二〇〇五年までの六年半、佐賀市長を務めていた。伯野卓彦著の本書『自治体クライシス』を手に取った時、地方行政の現場に身を置いていた者としても、赤字第三セクター問題は終わった問題ではないのかと思った。なぜなら、十年以上前に全国で公社や第三セクターの破綻が大きく取り上げられ、その処理は相当進んだはずと思っていたからである。しかし、実際に本書を読んでみて愕然とした。多くの自治体では抜本的な手を打たず、十年以上ズルズルと問題を先送りしただけだった。 本書は、青森県大鰐町という人口約一万二千人の町を主な舞台に、一九八六年に当選した油川町長が、国土庁の担当者や国会議員、リゾート会社に乗せられ、巨額な資金を要する第三セクターを次々に設立し、バブルがはじけて財政再建団体転落への危機に陥った過程と、そこから抜けだそうと苦闘する姿が丹念に描かれている。
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