小学生時代に音楽教室というものがあった。全校生徒でコンサート会場に足を運んで生の演奏に耳を傾けるという貴重な催しのはずなのだが、特にクラシックファンでなかった私は、たいてい第二楽章の半ばあたりで眠気に襲われてしまう。「どのぐらいでこの曲は終わるのかな」と思いながら過ごす時間は苦行に近かった思い出がある。 そのせいか、長いことクラシックの演奏会といえば「眠気との戦い」が付きものであり、それに打ち勝ったところで華やかな最終楽章を迎えるのが一種の通過儀礼のように思っていた。音楽教室で演奏されたプログラムは、たいてい、ベートーベンの交響曲第五番「運命」や第六番「田園」といった当時の文部省が選定した名曲だった。
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