社会保障に「乗っ取られる」来年度予算

執筆者:鈴木亘 2010年9月3日
タグ: 日本
エリア: アジア

 来年度(2011年度)の予算編成作業が混乱を極めている。7月27日に閣議決定された概算要求基準が、巨大な「社会保障関係費」とその自然増を聖域とする一方、その他の予算を1割削るという前代未聞の編成方針をとったためである。この「強い社会保障」にこだわった無理な編成方針と、民主党政権の悲惨なほどに低い政策遂行能力を考え合わせると、年末までに2011年度予算が組み終わらないという懸念が、現実のものになる可能性がある。

今年度と変わらぬ借金漬け

 既に、今年度(2010年度)予算自体、信じがたい内容であったことは周知の通りである。すなわち、子ども手当などのマニフェスト実現のために、過去最大の規模に膨れ上がった一般会計92.3兆円のうち、税収(租税及び印紙収入)で財源を調達できた分はわずか37.4兆円に過ぎず、国債発行による借金(公債金)が44.3兆円にも上った。しかも、埋蔵金の取り崩しによる「その他収入」も、恒常的に存在する収入ではなく、一種の借金に他ならないことを考えれば、実質的に55兆円近い借金を行なって組んだ予算であったと言えよう(図表・歳入総額の内訳)。

カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
鈴木亘(すずきわたる) 1970年生れ。上智大学経済学部卒。日本銀行勤務。大阪大学大学院修了(経済学博士)。大阪大学社会経済研究所、日本経済研究センター、東京学芸大学を経て、2009年4月より現職。規制改革会議専門委員(保育担当)。主著に『生活保護の経済分析』(共著、東京大学出版会、第51回日経・経済図書文化賞)、『だまされないための年金・医療・介護入門』(東洋経済新報社、第9回日経BP・BizTech図書賞)がある。
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