南アフリカで始まった長い道のり

執筆者:白戸圭一 2010年11月4日
タグ: 日本
エリア: アフリカ

 ある国の経済状況を知る指標の一つに自動車販売台数があります。一般的には好況下で消費が活発になれば台数は増え、消費が停滞すれば減る。一国でサハラ以南アフリカの約4割のGDP(国内総生産)を擁する地域超大国南アフリカの経済状況を知るに当たっては、当然ながら南アの自動車販売台数の趨勢が重要な経済指標となります。2007年以降減少傾向にあった南アの販売台数が回復基調にあるというニュースを読むと、BRICSの一角を占める南ア経済の堅調な推移を実感します。

 その南アで10月から「National Rolling Traffic Law Enforcement Plan」が始まりました。日本風に言えば「全国交通取り締まり強化計画」といったところでしょうか。
死亡交通事故の多さに危機感を抱いた南ア政府がスピード違反を中心に取り締まりを強化し、事故抑止を図ろうという国家的プロジェクトです。南アと言えばエイズの死者数と殺人事件の多さが常に注目されますが、死亡交通事故を巡る南アの状況は危機的な状態にあります。成長を象徴する車の急増と、死亡交通事故の多発。車を巡る南ア社会の「光」と「陰」は、経済成長下における人間の安全保障という課題について考えさせます。

カテゴリ: 経済・ビジネス
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執筆者プロフィール
白戸圭一(しらとけいいち) 立命館大学国際関係学部教授。1970年生れ。立命館大学大学院国際関係研究科修士課程修了。毎日新聞社の外信部、政治部、ヨハネスブルク支局、北米総局(ワシントン)などで勤務した後、三井物産戦略研究所を経て2018年4月より現職。著書に『ルポ 資源大陸アフリカ』(東洋経済新報社、日本ジャーナリスト会議賞受賞)、『日本人のためのアフリカ入門』(ちくま新書)、『ボコ・ハラム イスラーム国を超えた「史上最悪」のテロ組織』(新潮社)など。京都大学アフリカ地域研究資料センター特任教授、三井物産戦略研究所客員研究員を兼任。
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