浮世離れした話だが、視力の弱い私はほとんどテレビを見ない。夜の十時のニュース番組が、戦争だか合戦だかだそうだが、その時間は書斎に入って、書くか読むかしている。世間との接点は新聞と雑誌、視聴覚はもっぱらラジオに頼っている。プロ野球、ゴルフ、サッカーその他にもあまり興味がない。
だから又聞きで言うが、近頃のテレビのドラマは凄惨な場面を見せる、輸入物など正視に堪えないのが多いという。刺戟が強くなければ視聴率を稼げず、CMがとれないから、まあ当然だろう。
世間にはテレビを見過ぎた結果、画面に出る電子の影と現実の境界がボヤケてしまった人がいるらしい。有珠山の噴火でテレビをつけたら、洞爺湖の対岸の人が「テレビで見てると噴火したので、驚いて外に出ると、テレビとそっくりに噴火していた」と語った。テレビは現実に先行し始めている。
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