「21世紀地政学」に臨むアメリカ

対テロ戦争は米国に、新たな戦略課題を突きつけている。イスラム社会を国際システムに組み込めるか。そして自国民の団結と連帯をいかにして維持するのか。国際政治のパラダイムが激しくきしむ――。[ワシントン発]九月十一日はここを発ちすでに欧州に行っていたから、一カ月半近くワシントンには帰っていなかった。一つのテロ行為がこうまで国民の気分を激変させるものか。 IMF(国際通貨基金)のエコノミストをしている友人は、いささか哲学的になっていた。「人間というのは誰しも死ぬ運命にあるのに、そしてそれは誰にとっても最大の関心事であるにもかかわらず、私たちは日常そのことをそれほど深く考えずに生活していく術を知っている。しかし、あの日以来、メディアでは毎日、テロだ、炭疽菌だ、注意しよう、警戒しようとそればかりだ。人々は常に死ぬということを意識させられ、それと背中合わせに生きている」

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執筆者プロフィール
船橋洋一 アジア・パシフィック・イニシアティブ理事長。1944年北京生まれ。東京大学教養学部卒。1968年、朝日新聞社入社。朝日新聞社北京特派員、ワシントン特派員、アメリカ総局長、コラムニストを経て、2007年から2010年12月まで朝日新聞社主筆。米ハーバード大学ニーメンフェロー(1975-76年)、米国際経済研究所客員研究員(1987年)、慶應義塾大学法学博士号取得(1992年)、米コロンビア大学ドナルド・キーン・フェロー(2003年)、米ブルッキングズ研究所特別招聘スカラー(2005-06年)。2013年まで国際危機グループ(ICG)執行理事を務め、現在は、英国際問題戦略研究所(IISS)Advisory Council、三極委員会(Trilateral Commission)のメンバーである。2011年9月に日本再建イニシアティブを設立し、2016年、世界の最も優れたアジア報道に対して与えられる米スタンフォード大アジア太平洋研究所(APARC)のショレンスタイン・ジャーナリズム賞を日本人として初めて受賞。近著に『フクシマ戦記 10年後の「カウントダウン・メルトダウン」』(文藝春秋)、『自由主義の危機: 国際秩序と日本』(共著/東洋経済新報社)、『地経学とは何か』(文春新書)、『カウントダウン・メルトダウン』(第44回大宅賞受賞作/文春文庫)など著書多数。
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