本誌第十号の「シリコンバレーからの『長い手紙』」の中で、私は、九月十一日という日が自分の前半生と後半生を分ける分岐点となるに違いないという予感について書いた。それを読んだある友人から「君は珍しいモノの考え方をするねぇ」と半ば揶揄のこもったコメントをもらった。 確かに考えてみると「大きな環境変化が起きたときに、真っ先に自分が変化しなければ淘汰される」という「シリコンバレーの掟」に、私は知らず知らずのうちに強く影響されているのかもしれない。九月十一日という日を境に世界がどれほど大きく変わるのかはまだよくわからない。でも「前半生と後半生の区切りだ」くらいの構えで新しい自分を構築していく決意を持った方が、これまでの生き方に固執するよりも「リスクが小さい」と、私は確信しているのである。本質的変化に関する一つ一つの直感を大切に、時間の使い方の優先順位を無理しても変えてしまうことで、新しい自分を模索していきたいと今は思っている。

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