インテリジェンス・ナウ

テロ対策専門家の死はブッシュを安堵させたか?

執筆者:春名幹男 2002年2月号
エリア: 北米

 米大統領が年頭に行なう一般教書演説の夜、上下両院本会議の正面ギャラリーを見ると、大統領の政治的狙いがはっきり読み取れる。今年、この“儀式”に、ブッシュ大統領は、アフガニスタン暫定行政機構のカルザイ議長やサマル女性問題相、アル・カエダ兵を尋問中に殺された米中央情報局(CIA)要員マイケル・スパン氏のシャノン未亡人らを招いた。 しかし、米中枢同時多発テロで最も劇的かつ非業な死を遂げたあの男の遺族の姿は見られなかった。 ジョン・P・オニール。享年五十。同時多発テロに関する調査委員会が米議会で開かれれば、彼の名前は必ず、「オサマ・ビン・ラディンを追った米連邦捜査局(FBI)特別捜査官」として話題になるはずだ。だが、いま一部で、彼の死のおかげでブッシュ政権は真実を隠せた、との憶測が広がっている。

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執筆者プロフィール
春名幹男(はるなみきお) 1946年京都市生れ。国際アナリスト、NPO法人インテリジェンス研究所理事。大阪外国語大学(現大阪大学)ドイツ語学科卒。共同通信社に入社し、大阪社会部、本社外信部、ニューヨーク支局、ワシントン支局を経て93年ワシントン支局長。2004年特別編集委員。07年退社。名古屋大学大学院教授、早稲田大学客員教授を歴任。95年ボーン・上田記念国際記者賞、04年日本記者クラブ賞受賞。著書に『核地政学入門』(日刊工業新聞社)、『ヒバクシャ・イン・USA』(岩波新書)、『スクリュー音が消えた』(新潮社)、『秘密のファイル』(新潮文庫)、『米中冷戦と日本』(PHP)、『仮面の日米同盟』(文春新書)などがある。
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