クオ・ヴァディス きみはどこへいくのか?

自爆テロ国家への米国の処方

 涙は女の最大の武器で、泣かれると男は太刀打ちできないという。一度も泣かせたことのない者には、小泉発言の当否は分らない。だが男も女もひっくるめて、誰も太刀打ちできない武器が、他にもう一つあって、それは自爆テロである。 普通の乗客のふりして乗った旅客機をハイジャックし、世界貿易センタービルに突入して三千人を殺した。乗り合わせて死んだ客やビルで死んだ人々は、犯人たちの名を知らず、会ったこともない。パレスチナ人に害を加えたこともない。文明社会を泳ぐ、罪なき一泳者にすぎなかった。 イスラエルのある町のパーティに、一人のパレスチナ青年が入ってきた。遅れて来た客か? 文明社会には、パーティに遅れて来る人がよくある。

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執筆者プロフィール
徳岡孝夫(とくおかたかお) 1930年大阪府生れ。京都大学文学部卒。毎日新聞社に入り、大阪本社社会部、サンデー毎日、英文毎日記者を務める。ベトナム戦争中には東南アジア特派員。1985年、学芸部編集委員を最後に退社、フリーに。主著に『五衰の人―三島由紀夫私記―』(第10回新潮学芸賞受賞)、『妻の肖像』『「民主主義」を疑え!』。訳書に、A・トフラー『第三の波』、D・キーン『日本文学史』など。86年に菊池寛賞受賞。
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